現代パラレルでマイスターズは幼馴染です。
皆ロックオンが大好き!









夏休みだってのに、海にもプールにも旅行に行かないなんて思春期男子として不健全だろ!
というロックオンの意味の分からない勝手な言い分のせいで、本日の俺の予定は家で課題を片付けるというものから、片道一時間かかるレジャープールに行くという予定に塗り替えられた。
だが、

「ロックオン、ぐっすりだね」
「・・・・・・ああ」

言いだしっぺのロックオンは空調の効いた俺の家のリビングのソファーの上で盛大に寝こけている。








summer days








冒頭の会話から3分前、刹那の家にチャイムの音が鳴り響いた。
刹那の両親は海外赴任中なので、現在この広い一軒家に刹那は一人暮らし。したがってドアを開ける人物は刹那しかいない。
ゲームのコントローラーを手にテレビ画面に座り込んでいた刹那はゲームを一時停止して気だるげに腰を上げた。
冷房が効いたリビングから廊下へ出るとむわっとした気持ちの悪い空気が纏わり付き、一気に不快指数が上昇していく。
無用心だ、とよくロックオンに言われるが、刹那は逸早くリビングに戻りたいがためにいつも通り無言で玄関のドアを開ける。
そこに立っていたのは宅急便の配達員でも、新聞の勧誘でもなく、よくよく見知った顔。
近所に住むアレルヤ・ハプティズムとティエリア・アーデの二人。
おはよう、と笑顔で挨拶するアレルヤは片手に美味しそうな大きなスイカを軽々と抱えている。
今日この二人と会う約束などしていなかった筈。意味が分からない、と刹那が目で訴えるとアレルヤは苦笑し、ティエリアは無言で携帯を取り出すと、とある受信メール画面を開き、刹那の目の前に突き出した。
眉間に皺を寄せた刹那は無言で画面に映った文字を追う。


『×日午前10時に刹那の家に水着持って集合!』


送信者はロックオン・ストラトス。
勝手に刹那の家を集合場所にするような人物は現在ロックオンぐらいしかいない。
ティエリアの携帯電話のディスプレイの右上には小さな文字で10:01と表示されている。
アレルヤとティエリアらしい、と刹那が無駄に感心しているとティエリアは「上がらせてもらう」と刹那の了承も得ずに、ずかずかと室内へと入り込んでいく。
無言のままアレルヤの顔を見つめると、アレルヤは困ったような笑みを浮かべた。

「スイカ、冷蔵庫に入れておこうか」









「刹那・F・セイエイ」
「何だ」
「これはどういうことだ」
「・・・見たままだ」

刹那とティエリアの視線の先にはモスグリーンのクッションを抱えて気持ち良さそうに眠るロックオン。
頭上で会話されている上に、不躾な二人の視線が注がれているというのに、ロックオンはまるで気付いていないようで幼い表情でスヤスヤと寝息を立てている。

「ロックオン、ぐっすりだね」
「・・・・・・ああ」

キッチンの冷蔵庫にスイカを冷やしに行ったアレルヤは、お盆に3つの色違いのラインが入ったグラスを載せて戻ってきた。麦茶が注がれたそのグラスの中からカランと氷が涼しげな音を立った。
ブルーのグラスを刹那に、パープルのグラスをティエリアに。そして、空いたお盆をリビングのローテーブルに置くと、アレルヤはオレンジのグラスを手にフローリングに腰を下ろした。
冷房が効いているのでフローリングが冷えていて気持ち良い。アレルヤはふう、と一息ついてからグラスの中の麦茶を喉に流し込んだ。

「いつからこの状態なの?」
「一時間前に家にやって来て、俺がトイレに行って戻ってきたときには寝ていた」
「相当疲れたんだろうね」
「それなのにプールに行こうとしていたのか、この人は・・・」

吐き捨てるように言うティエリアの視線の先には、ロックオンの足元に置かれた、恐らく水着やタオルなどが入っているのであろう大きな荷物。
その大きさからいって、おそらく浮き輪やビーチボールまで用意してきたのだろう。
刹那はグラスの中のグラスを半分まで飲み干すとローテーブルの上に置き、ゲームを再開するべくテレビの前に座りコントロールを手にした。
そこで刹那はあることに気付いた。

「・・・ところで2人は何しに来たんだ」

ロックオンはプールに行くと言っていたし、ティエリアが見せてきたメールにも水着を持って来いとの指示があった。だが見たところ、というかアレルヤはスイカしか手にしていなかったし、ティエリアに関していえば手ぶらでやって来ている。

「うーん・・・遊びに、かな?」
「・・・この家にか?」
「そうだ。俺達は元よりプールなどに行く気などない」
「僕達水着なんて持ってないし」
「・・・ロックオンに悪い虫がついたら困る」
「ああ、そうだ。この人は女だけでなく男まで寄せ付けてしまうからな」
「まったく、困った人だよね」
「「本当にな」」

先ほどから無防備な寝顔を晒しているロックオンを狙う輩は多い。
顔も良く、性格も大らかで気が利くし上、博愛主義なのか無駄に優しいので女は勿論、男まで勘違いしてしまうのだ。
そんな輩を今までロックオンが気付かない内に3人は不届き者を排除していた。
時にはあからさまな方法も取っていたのが、ロックオンは3人がそんなことをやっているなど露ほども知らない。
人の心に聡いロックオンは、何故か自分に向けられる恋愛感情に関してだけは異常なほど鈍いのだ。
そのため、そんな不穏な感情を抱かれていることも、この3人から向けられている恋愛感情にもまったく気付いていない。
まったくもって報われていない3人なのだが、何だかんだ言って今のこの4人の関係に満足しているので現状を打破しようという思いはない。

「刹那、僕も一緒にゲームやっていい?」
「ああ」

刹那はテレビ画面から視線を外さずに、もう一つのコントローラーを手繰り寄せて隣に移動してきたアレルヤに手渡した。
一度スタート画面に戻し、1人プレイから2人プレイへと設定を変更するとテレビ画面から軽快な音楽が流れ出す。
ティエリアはソファーを背もたれ代わりに、無造作に放られていた新聞を難しい顔をして読んでいる。
暫くゲームを楽しんでいるとアレルヤが

「ねぇ、夕方にスイカ割りしようよ。ちゃんとビニールシート敷いて」
「・・・アレルヤ・ハプティズム。ビニールシートなど用意しているのか?」
「してないけど・・・」
「言っておくがこの家にはそんな物ない」
「じゃあ普通に切って食べる?スイカ割り、きっとロックオン喜ぶと思ったんだけど・・・」
「・・・仕方がない。そこのコンビニで買ってきてやろう。ただしアレルヤ・ハプティズム貴様の金でな」
「あぁ、構わないよ」

アレルヤはジーンズの後ろポケットに突っ込んでいた財布をティエリアに手渡す。
ティエリアはその財布の中身を確かめると、ふっ、と不吉な笑みを浮かべた。

「報酬としてハーゲンダッツを頂く」
「えっ!?」
「ティエリア、俺はクッキー&クリーム、ロックオンは抹茶だ」
「ちょっ、刹那?」
「分かっている」
「えー!」
「心配するなアレルヤ・ハプティズム。貴様の分のストロベリーも買ってきてやる」
「そういう問題じゃないよ・・・!」
「いらないのか?」
「・・・いります」

その言葉を聞くとティエリアは満足そうに口角を上げてリビングから出て行った。
アレルヤは心の中でこういうときティエリア女王様キャラだよね、と呟いてみたが、ハレルヤは就寝中なのか返事はなかった。
余計なときにしゃしゃり出てくるくせに、こういうときはダンマリだよね、ハレルヤ・・・。

「・・・ロックオン」
「え?」

アレルヤが心の中で涙を流していると、隣にいる刹那がボソリと彼の人のを呟いたので一気に現実世界に引き戻された。
何事かと思い刹那の顔を見ると、彼はいつも通りの無表情で淡々とコントローラーを操作している。
ロックオンがどうかした?、とアレルヤが優しい口調で問いかけると刹那はちらり、と後方のソファー―正しくはソファーの上で寝ているロックオン―を一瞥した。

「こんなに五月蝿くても起きないとは珍しいな」
「うん、そうだね。相当仕事で疲れてたんだろうね。・・・あ、ロックオン涎垂れてる」




蝉が喚く午前11時。
ロックオンが目覚めたのはこれから4時間後のことであった。






4人は近所に住む幼馴染で、3人はロックオンが大好き。
それにしてもロックオンとアレルヤの扱いが酷すぎる・・・






(2008.08.06)